孤高の凡人

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孤高の凡人

On the Road

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無慈悲の咆哮

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最近のトイレには自動式尻穴洗浄システム、俗に言うウォッシュレットといわれる機能が搭載されている。
お恥ずかしい限りだが、私はそのような高級なトイレがデフォルトで設置されているようなお家に住んだことがない。今まで5度引越しを経験してきたのだけれど、未だにこの自動式尻穴洗浄システムを経験したことがない。
体験してみたい。一度でいいから尻の穴に水を噴射されたい。
という下の下、ゲノゲの鬼太郎である私の夢が叶ったので報告したい。

建設業で働く私は、一般の方のお家の修繕などにも出向く事がある。現在、某観光地のすぐ横にある高級住宅街のうちの一軒の工事をさせて頂いているのだが、住人様のご好意でお家のトイレをお借りする事ができた。通常、建設業ではトイレのない現場が多々あり、近くのコンビニエンスストアーまで尻の穴を押さえながら競歩で行く事が多いなか、このように快くトイレをお借り出来るのは非常に有り難い。お金がある人は心も大きいようだ。いや、心が大きいからお金を稼ぐ事ができるのかもしれない。

本日もまた、その現場で私は腕を組み、職人が作業しているのを呆然と眺めていた。文章だけ読むと、「仕事しろよオッサン」「見てるだけなんて楽な仕事だな」とコメントされそうだが、それは全然違う。分かってない。この工事をさせて頂くまでの営業、見積り、各業種の手配、工程管理を行い、最悪、職人がミスをした場合、その責任を一人で背負い謝罪するのが私の仕事。最もストレスが溜まるポジション、それが施工管理なのだ。私だってなりたくてなった訳ではない。小学校の作文で『おおきくなったらなりたいもの』に『建設業施工管理』と書く奴は一人もいないだろう。いたら紹介してほしい。人手不足だから。
話が逸れたが、私は決してサボタージュを決め込んでいる訳ではない。しっかりとこの曇りなきおめめと圧倒的な責任感で現場を管理しているのだ。
で、しばらくジッとしているとやっぱりしたくなるのが、うんこ。
私はトイレを拝借するためにお家へ入った。
トイレのドアを開けるとウイィィィという機械音と共に自動的に便器の蓋が開いた。私はそのポルターガイスト的な現象に強烈に驚いて一度トイレを出た。そしてそぉっと中の様子を伺った。蓋は閉まっている。
なんだこれは、心霊的な何かか。それとも時代は私の知らないところでこんなにも進化していると言うのか。
浦島太郎の心中をお察ししながら、私は再度トイレに入った。再びウイィィィと蓋が開く。
感動。マジリスペクト。やはり時代は進化していて最近のトイレはタクシーのように自動で蓋が開く。
座り心地も素晴らしい、なんというか高さ?それが丁度良い。あと温度?これが絶妙。冬の寒い夜に隣にいて欲しいのは全裸のグラビアアイドルではなく、このトイレである。
未だかつてない心地よさの中、用を足した私はふと壁を見た。様々なボタンが付いている。
ビデ?ビデとはなんなのだ。
その時頭のなかで故スティーブジョブズの伝説のスピーチが流れた。
stay hungry, stay foolish
私に迷いはなかった。押す、このボタンを。
ボタンを押すとウイィィィという機械音とほぼ同時に下から水が噴射。
「ぬわあぁぁぁぁっっ!!」
キン○マの裏あたりをグングニルの矢が貫いた。
「んウェイrんウェヒlウェ」
言葉にならずにとにかくこのグングニルを止めようとツマミのようなモノを捻った。「ぬらばああああぁぁあ!!」
間違えてツマミを強に捻った私は、施工管理で培った責任感から、水が飛び散ってはいけないと思い、立ち上がるという事をせずにキン○マを撃たれ続けた。
とにかく、とにかく違うボタンを。
般若のような顔で私は手探りにボタンを探し、隣にあった『おしり』というボタンを押した。
ウイィィィという機械音、刹那、私は死ぬ間際に人間が見る走馬灯のようなものを見た。
もっと、娘と遊んであげれば良かった。
もっと、家族と旅行に行けば良かった。
仕事なんて適当に済ませて、もっと一緒にご飯を食べて、もっと一緒にお風呂に入って、もっと一緒に日々を過ごせば良かった。
走馬灯が流れる傍、『強』に設定されたノズルは静かに私の肛門を目指した。
やがて走馬灯は消え、我に返った私に無慈悲の咆哮が発射された。水は肛門に直撃、「けるひゃあぁぁぁぁぁぁっっ!!!」という叫びと共に、私は施工管理で培った責任感を投げ捨てて立ち上がった。
その瞬間、一滴の水を飛び散らせる事も無く、ノズルは停止、本体へ格納されていった。うんこはザアァァと自動的に流れ、まるで私を馬鹿にするかのように、蓋が自動的に閉まった。
 
私は静かにパンツを履いた。尻のあたりががビショビショのままパンツを履いた。
そして人間が死んだら菊の花が添えられる意味を理解した。菊の門だけに。

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