孤高の凡人

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孤高の凡人

On the Road

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手をかざすだけで病が治ると思ってる病

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「片岡の杏仁豆腐ください」

私たちは小籠包、餃子、焼売、炒飯などを一頻り食べ終え、デザートを注文することにした。お品書きをじろろと見て、これにしよう!と呟きたる母はスタッフを呼びつけ、これを注文した。

スタッフ、家族、その場にいた全員がポカーンに包まれた。小籠包のように。

しかし母が指差すお品書きには、しっかりと『タピオカの杏仁豆腐』と記載されていた為、スタッフは一言「承知致しました。」と言って奥に消えた。 到着した杏仁豆腐を頬張りながら、「あー片岡美味しいわー。」という母。 私は全国の片岡さんがあの蛙の卵のようなものの中に閉じ込められていると思うと、とてもその杏仁豆腐を食べる気にはなれなかった。

そんな母が私に手をかざしている。

私は梅雨入りしてぐんぐん迫ってくる低気圧によって、日々偏頭痛に悩まされていた。 それを母に話すと、母は私の背後に移動し、そっと目を閉じて、私の後頭部に手をかざした。

「よし、これで治ったやろ」

私は何の変化もない頭をさすり、「ありがとう」と言った。

 母は昔から様々な事に手を出しては、飽きてやめるを繰り返してきた。

某マルチ商法の商品、ヘッドのむちゃむちゃデカイ歯ブラシ。クッキングシート必須の焦げ付かないフライパン、鍋。一錠数百円の緑色のサプリメント。 これらを友達に売りつけたりした。

他には商品券やお米と引き換えに契約した居場所のない京都新聞、読売新聞、産経新聞、聖教新聞を全て揚げ物の下に引いたり、過去私に強制的に習わせた、羽生名人オススメの公○式、これの講師を自宅で行い、「やっててよかった」と言いながら、「買いもんいくもん」とスーパーへ出かけたりした。

そんなポジティブの権化のような母によって、私は全ポジティブを撲殺したい気持ちでその青春時代を過ごした。

そんな母が現在熱を入れているのが、某宗教であった。

その某宗教は手をかざすだけで、癌、脳梗塞、骨折、高血圧、躁鬱、統合失調症、頭痛、生理痛、歯の痛み、虫刺されなどが治るらしく、道行く人に、「あなたの風邪は喉から?」と突撃し、手をかざして、救済することができる聖人の集まりであった。

あまりにも素晴らしいので、そのありがたい教えが書かれた本を読ませていただいたが、下に小さく、病気はバシッと完治するが、病院には一応行ってね。というニュアンスの事が書かれていて、私はその闇を感じずにはいられなかった。

この魔法は『手かざし』と呼ばれ、病の治療のほかに、食品関係、つまり米や水などにも使用でき、その初期スペックを底上げしてタイ米が一瞬にしてあきたこまちか、ミルキークイーンになるという人智を超える魔法であった。母は自身が手をかざした賞味期限切れのドッグフードを食べた実家の愛犬がそれを全部残したことに対しては「犬などに分かってたまるか」と70年代初期パンクのような捨て台詞を吐き、人間がいかに崇高な生き物であるかを私に見せつけた。

しかしこの『手かざし』を最高水準にもっていく為には、琥珀色のネックレスが必要であった。

これのアイテムを手に入れるには、まず福沢諭吉と樋口一葉と夏目漱石に桐、竹、橘、桜花をたくさん植えた平等院鳳凰堂に集合して頂く。すると天空から武器屋の主人が現れて「ここで装備していくかい?」と問われるので、「うん」と答える。このような手順を踏む必要があった。つまりは金がいるのである。母はおそらくこれをクリアして、そのアイテムをゲットしていた。

母は琥珀色のネックレスをして、あらゆるものを回復させた。

父の仕事の請求書、預金通帳、ひび割れた壁、安物のお米、しなびた野菜、茶色くなったバナナ、水道水、ルイボスティー、弟の頭、隣人の子供、パンクした自転車、目につくもの全てを回復させていった。

私は切に願っている。母が自身の頭にこの能力を使用することを。そしてこの『手かざし』を会得した崇高な方、更にネックレスを手に入れた崇高な教団員一同にお集まりいただいて、そのような人智を超えたことに対して何の疑問も持たずに平然とそれを行える、そのインテルの入っていない頭にお互いの手をかざしあって欲しいと。そのタイ米程度しかない脳味噌を見事ミルキークイーンにして欲しいと。切に願っている。

(この文章はiPhoneに手をかざしながら30分で書かれた。)

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