孤高の凡人

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孤高の凡人

On the Road

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いつもの

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午前4時、うなされながら私は目覚めた。

白米で構成されたボディの新婦が、頭が玉葱の子供達にその手を引かれ、ヴァージンロードを歩いてくる。

黒人の神父の前でふごふごと鼻息荒く待つ、新郎は頭が牛でミノタウルスのような姿をしている。

白米の新婦とミノタウルスの新郎が対面し、永遠の愛を誓う。刹那、眩い光が彼等を包み、次の瞬間二人は一体化して、『牛丼』へと姿を変えるのだ。

牛丼になった彼等は、頭が玉葱の子らを従え、ヴァージンロードを引き返す。

それを祝福するように、人々は大根おろしを天空に向かって拡散する。

その大根おろしを頭から浴び、とても不快な気持ちで牛丼が通過するのを待っていると、突然私の前で牛丼がストップし、「はい、いつもの。」と手に持ったポン酢を大根おろしが乗った頭に浴びせる。

ここでいつも目が覚めるのだ。

寝汗でびしょびしょになった頭を触り、匂いを嗅いでそれがポン酢でない事を確認して再び眠るという日々が10日ほど続いている。

 

今日も早くに目が覚めてしまったので、軽くシャワーを浴び、やや早めに片道1時間半の現場を目指した。

 

私は建設業で働いている。

建設業といえば、3K。本来の3Kである高身長、高学歴、高収入とは真逆の、危険、汚い、キモいの3Kであり、ママ友に教えたくない旦那の職業ランキングで常に上位に食い込むほどの下の下、そんなゲノゲの鬼太郎として、格差社会というピラミッドの基礎部分を、その頭の固さと同じ硬度に固めたる職業である。

私の会社は、遠くの現場の工事も受注しており、会社で一番若く、下っ端である私は、そういう遠方の現場を任されることが多い。

私が現在担当している現場も、家から片道一時間半と遠く、言っちゃ悪いが田舎である。

田舎の現場の何が困るかと言えば、お昼ごはんであり、この現場から徒歩で行ける飲食店は『すき家』オンリー。

というわけで、私は本日で30日目、毎日すき家でお昼ごはんを食べているのである。

そして私は元来、研究者気質と言うか、幼稚園児のソレというか、なんで?コレなんで?と、すぐ疑問に思ってしまう性格であり、その悪い癖がこのすき家でも発揮されてしまったのである。

それは居酒屋などの常連が店に入るやいなや「いつもの」と注文するアレ。

あの『いつもの』はどのタイミングから通用するようになるのか、検証したくなったのだ。

その為に私は初日から食べたいものを我慢して『おろしポン酢牛丼』のみで縛り、10日目、20日目、店員に「いつもの」と言ってみた。

しかし店員は私の『いつもの』が理解できず、「は?」と威嚇してくるので、私はしゅんとして「あ、お、おろしポン酢のやつです。そ、それの並でしゅ。」と答え、周りの客にホワイトな目で見られ、辱しめられた。

以後、私は『おろしポン酢牛丼』の夢にうなされ、幻覚や幻聴で頭がおかしくなりそうだった。

しかし、やめるわけにはいかぬだろう。

人類は大いなる犠牲者によって進歩、進化してきたのだ。

例え私が『おろしポン酢牛丼』で滅びようとも、『いつもの』のその答えが出れば、そしてそれが皆さんのお役に立てれば、何も言うことはない。 

いざゆかん、30日目のおろしポン酢牛丼。と本日も私は意気揚々と、すき家を目指した。

店内に入り、席に着く。

なか卯のように食券を先に購入するシステムだと、このような事はできぬであろう。

これが、すき家の良いところ。

店員が水を運んできて、そのエプロンから電卓のようなモノを取り出し、「ご注文はお決まりですか?」と聞く。

 

お決まりですか?決まっておろうが、そんなもの。当たり前だのクラーケンである。

 

私は声高らかに「いつもの!」と言った。

女性の店員は少し笑って、「おろしポン酢牛丼の並で宜しいでしょうか?」と答えた。

 

感無量である。

 

いますぐこの店員を抱きしめ、すき家を抜け出し、最寄りの結婚式場で、挙式を挙げたい気持ちでいっぱいになりながら、私は「うん」と答えた。

 

そして私の前に現れた『おろしポン酢牛丼』

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女性店員が奥に入って行って、厨房でニヤニヤしている男性に「おろポン土方、いつものやつです!」と言っていた事はこの際水に流そう。

 

結果は、30日、つまり1ヶ月間同じ店に通い、同じメニューを注文し続けると、『いつもの』が通用するという答えがでたので、皆さんも是非試してほしい。

 

もれなく、心をズタズタに引き裂くような『あだ名』も付けてもらえるから。

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